私たちが精神的に苦しむ理由の一つに、思考や感情との同化があります。
ある思考を強く信じ切ってしまっていて、そこにとらわれています。
本当は、思考や感情は単に流れてくるものであり、エネルギーに過ぎません。
放っておけば流れていきます。
実際に試して感じてみてください。
●思考は本当に自分で作り出しているのか?
●思考の内容をコントロールすることはできるのか?
●その思考が流れないことが今まであったか?
すべて「ノー」でしょう。
私たちは思考を作っているわけではありません。勝手に出てくると言ってもいいです。
その証拠に私たちは思考をコントロールできません。
ですから、思考をコントロールしようとするアプローチは不毛に終わります。
そして、今の苦しい思考にとらわれすぎてしまいます。
もちろんその気持ちはよーく分かりますよ。
苦しいときは早くそこから抜け出したいですものね。
でも、焦りが逆に、苦しい思考に余計とらわれることになって、さらなるネガティブな思考と感情に巻き込まれることになります。
思考や感情を眺めるというテクニックは、同化を防ぐことに大きく役立ちます。
ただ、このテクニックは同化にまみれている苦しい状態で実施するのは容易ではありません。
緊急的なアプローチよりも、日常的に行って、だんだんと思考に巻き込まれなくなる体質というかクセづけしていくものかなと感じています。
また、このテクニックは自分自身が思考や感情ではないことを知るための素晴らしい技法であり、私もトレーニング中です。
さて、思考や感情との同化ですが、例を挙げたほうが分かりやすいですね。
たとえば、「私は分かってもらえない」という思考に巻き込まれたとしましょう。
他にもいろいろあると思いますが、分かりやすく説明するためにシンプルにします。
「私は分かってもらえない」という思考に巻き込まれると、そこにくっついている感情、たとえば、怒りや悲しみ、絶望感などと絡み合って、強い苦しみが生じています。
「私を分かってもらえなかった」過去の証拠が次々に脳裏に浮かんでくるかもしれません。
本当は分かってもらえた事例も山ほどあるのですが、その事例はほとんど出てきません。
数々の証拠を思い出し、「やっぱり私は分かってもらえない存在なんだ」と感じます。
そこから負のスパイラルです。
「分かってもらえない私」は、そもそも存在価値がないからじゃないか?
皆に迷惑をかける存在だから、分かってもらえないのではないか?
嫌われている存在だから、分かってもらえないのではないか?
そんな価値がない存在であれば、生きている価値もないじゃないか?
もう生まれてくるんじゃなかった。
死んだ方がマシだ。
私なんて何もできない無力で無価値な存在だ…
もちろん個人差はあり、あくまで一例ですが、こんな感じで苦しみが大きくなり、不幸のどん底にいる感じがします。
ここまで深く苦しみと同化していると、なかなか一人で脱却するのは大変です。
カウンセラーの力を借りたほうがよいと思います。
カウンセラーが優れているというよりも、彼らはプロなので対処法が分かっているからです。
私自身も、もしこんなふうに苦しみのどん底に巻き込まれたら、他人の力を借ります。
その方が抜け出すのが早いと分かっているからです。
ただし、抜け出したとしてもそれはあくまで一時的であることを知っておく必要があります。
たった1時間やそこらのワークでは、その状態を落ち着かせることはできても、ネガティブなビリーフの書き換えや根本的な自己価値の向上まではできません。
そこは落ち着いたときにきちんと取り組む必要があります。
「私は分かってもらえない」
この思考を信じているのは、分かってもらえなかった証拠が過去にあったからです。
分かってもらえなかったことで大きな傷ができたのです。
そのときにたくさんの感情もあったでしょう。
EFTは、分かってもらえなかった証拠となる過去の記憶の感情を消去できます。
そうすると、「私は分かってもらえない」と思った根拠がなくなるのです。
そのため、「あれ? 別にそんなこともないかな」と勝手に変わるわけです。
そうすると思考の同化は起こりにくくなります。
これが思考の書き換えですが、無理やり信じ込ませるわけではありません。
マトリックス・リインプリンティングも原理は同じです。
こちらの方が潜在意識によりアクセスしやすいことと、場面を書き換えできるのでより効果的にネガティブな感情が落ちます。また、ポジティブな感情をその場面に入れることで安心感が強くなります。
残念ながら、私たちが持っているネガティブなビリーフは一つではありません。
そのため1つ癒したら終わりというわけではないのです。
時間がかかります。
さらに人生に大きな影響を与えている「コア・ビリーフ」であれば、ゆるめるにはかなりの時間がかかります。
なので、私はセルフワーク講座でテクニックをレクチャーし、自分でできるところは自分でやることをオススメしています。
同時に、自分でできる限界も知っているので、セッションの複数回コースを今は積極的にオススメしています。
セッションやワークを続けると、「私は価値がない」というビリーフがだんだんゆるんできます。
自分の価値のなさに直面するのはとてもつらいことです。
なので、ここを見ないようにするために私たちはたくさんの防衛行動をしています。
もし、「私は価値がない」というビリーフが緩めば、価値を上げるための防衛行動をしなくなります。
自分に価値がないということを信じていないと人生がすごく楽になります。
他人の言葉にネガティブな影響を受けるのは、根本的には自分の価値のなさを刺激されるからです。
無意識で「私は価値がない」と思い、それを恐れているから、そこにつながるような相手の言動が気になります。
そのため、相手の言動をコントロールするように自分の人生を作っていきます。
地位や名誉、権力を求めるのも実はそこに原因があるのです。
相手の顔色を窺ったり、スキルを身に着けたりするのも一緒です。
それらは、「恐れ」によって動かされている生き方です。
「私は価値がない」というビリーフが緩み、価値があろうがなかろうがどうでもいいという感じになれば、「恐れ」から行動することがぐっと減ります。
そうすると、より「ハート」「喜び」から行動することができるので、人生の質が変わるのです。
ようやく本当の自分らしくいられることができます。