敏感な資質を持つメカニズム
人が不機嫌だったり、何か不満を持っている様子だったり、怒っていたり、批判されたりすると、ネガティブな気持ちになると思います。
ただ、これは人によって反応はまったく違います。
ものすごく敏感な人は、ビクビクして緊張が走り、恐怖や不安を感じ、長い時間それを引きずりがちです。
一方、鈍感な人もいます。
怒られたり、批判されている直後はシュンとしていますが、すぐにケロッとして、何もなかったかのように笑い話を始めていたりします。
敏感な人は鈍感な人がうらやましいと思うでしょう。
「なんでこんなにビクビクしてしまうんだろう」
敏感な人はこんなふうに思っているかもしれません。
敏感な人は恐怖などの警報反応が敏感
敏感な人は、同じ刺激でも他の人たちよりもシグナルが強く出現します。
恐怖を起こす警報が、たとえ小さい刺激であっても大きく反応しているということです。
敏感な性質は生まれつきとその後の影響の相互作用
敏感な性質は、元々生まれ持っている性質とその後の環境の影響の2つが関わっています。
生まれつきの資質とその後の環境は半々だと言われています。
生まれつきの影響
つい最近、一卵性双生児のペアの片方が病院で取り違えられたケースをTVでやっていました。
双子として(実際には双子ではない)同じように育てられても、性格はまったく違っていました。
性格、資質は遺伝が大きな影響を与えています。
ただし、遺伝だけが資質を決めるわけではありません。
生まれてからの環境も資質を左右する原因になります。
生まれてからの影響
もっといえば、胎児のころの環境から影響があります。
近年ではバーストラウマの研究も進められており、かつては胎児は感覚や記憶を持たないとされてきましたが、現在では胎児も感覚を持っているとされています。
胎児のときに母親が何らかの不安を抱えていて、それを感じ取っていることが影響している可能性もありますし、出産時のバーストラウマが資質に影響を与えている可能性もあります。
また、生後、特定の人から十分な愛情を受けないと、安心感が育ちません。不安を感じやすい体質になります。特に生後6か月までの影響が大きいと言われています。
もちろん、生後6か月以降、大人になるまでの何らかの深い心の傷が、恐怖に対して敏感になる原因となります。
恐怖を避けるための防衛行為
私たちは恐怖を避けるために防衛行為を行います。
誰かを頼る
強いものに従う
相手に合わせる
場の空気を読む
相手が何を考えているかを察知しようとする
ルールを作って守る
何らかの「正しさ」に固執する
自分を他者よりも高い位置に置く
他者を支配する
恐怖や優越によって相手をコントロールする
罪悪感や相手の弱さを利用してコントロールする
強さを見せつける
違う自分を演じる
おどける
自分を魅力的にする
心を閉ざす
感情のセンサーを鈍くする
引きこもる
気をそらす
何かでフタをする…など
たくさんの行為があります。
どの防衛行為を使うかは、子どもによって異なります。
たまたまうまくいったとか、身近な人の性格も影響しているでしょう。
本人の元々の資質も大きく影響しています。
元々敏感な資質を持った子どもは、その敏感さを利用して、他者の反応を敏感に察知することで、他者からの攻撃や批判を避けるケースがあります。
自分の得意なものを防衛行為に使います。
すると、ますます敏感さが磨かれます。
トラウマも敏感性を強める要素
他にも敏感さを強める要因があります。
心に傷を負う体験です。
トラウマ、恐怖体験です。
人間は生きるために危険を回避しようとするメカニズムを持っています。
一度心の傷を受けるような体験があると、次にそうならないように回避しようとします。
心の傷、トラウマ体験は、恐怖を強める方向に働き、ゆえに敏感性もますます磨きがかかります。
元々鈍感なタイプは、人の顔色やニーズ、空気を読むことが得意ではないため、この防衛反応を取りにくいです。
元々の鈍感さを利用して、恐怖を麻痺させる方向で恐れを回避するほうがやりやすいでしょう。
敏感な人が人から嫌われる恐怖をやわらげるのに有効な3つのアプローチ
以上のことから、元々敏感な人が、人から嫌われたり、批判されることを恐れている場合、次の3つのアプローチが有効です。
- ①元々の敏感な資質を受容する(否定しない)
- ②敏感さを過剰に強めている心の傷(トラウマなど)を癒す
- ③境界線を引く練習をし、無意識に他者の領域に入る癖から抜け出す
これらをどうやってやっていくかはまた別の記事で紹介していきます。
それだけでかなりの文字数になってしまいますので。
①については、今後、ブログで受容のやり方を紹介しようと思っています。
③は下記の記事を参考にしてください。
今回は、なぜこの3つが有効かということのみにとどめます。
①元々の敏感な資質を受容する
なぜ、①自分の敏感な資質を受け入れることが有効ということですが、大きく2つあります。
1つは、自分の敏感さを否定していると、それを他者に見せないようにしようとします。敏感さを恥だと思っているので、ばれないように隠します。
恐いのに恐くないふりをします。
すると、恐怖の感情を抑圧することになるため、余計恐くなります。
もし、自分の敏感さを受容できていたらきちんと恐がることができます。
この、きちんと恐がることができる、というのが非常に重要です。
恐いときに、ちゃんと恐いと表現でき、十分恐がることができれば、時間が経つと恐さは必ず落ち着き、平気になります。
もう1つは、敏感さを否定していると、自分の採用している防衛行為を否定してしまいます。
敏感性が強い人は、人の顔色をうかがったり、他者の機嫌を取る行為を採用することが多いです。
そして、その行為をしている自分を責めます。
防衛行為を責めたところで実は何の解決にもなりません。ただ自分を傷つけるだけです。
その防衛行為の元となるところに目を向けない限り、防衛行為は止められません。
防衛行為が止められないので、さらに自己批判のエサになってしまいます。
②敏感さを過剰に強めている心の傷(トラウマなど)を癒す
②敏感さを過剰に強めている心の傷(トラウマなど)を癒せば、過剰な恐怖から正常な恐怖にすることができます。
私は、EFTとマトリックス・リインプリンティングというセラピーテクニックを使っていますが、その他にもトラウマ解消テクニックはいろいろあります。
③境界線を引く練習をし、無意識に他者の領域に入る癖から抜け出す
③境界線を引くことも非常に有効です。
敏感性が強い人は、人の顔色をうかがったり、他者の機嫌を取る防衛行為を行うことが多いですが、これは、他者の境界線に入ることを意味します。
そのとき、自分の領域はおろそかになります。
人生の長い期間に渡って、無意識に他者の境界線に入ることをやっているため、「自分がどうしたいか」ということが分からなくなっています。
境界線を引く練習をすることで、「他者がどう思うか」から「自分がどうしたいか」へ少しずつ移行できるようになります。
3つのアプローチは相互にプラスの影響を与える
どれか一つのアプローチだけでよいというのではなく、3つとも重要なので、セッションでは3つともカバーしてやっています。
①敏感な資質の受容ができれば、②心の傷の解消がやりやすくなり、③境界線も引きやすくなります。
②心の傷の解消ができれば、①敏感な資質の受容がしやすくなり、③境界線も引きやすくなります。
③境界線を引くことができれば、①敏感な資質の受容がしやすくなり、②心の傷の解消もしやすくなります。
相互にポジティブな影響を与えているので、3つとも取り組んでいくのが有効です。