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内田樹「街場のアメリカ論」

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最近、内田樹にハマっています。
何冊も一気読みしています。第一級の知性が本質を痛快に語るさまは絶品です。
知性も半端ないけれど、ボクが内田樹を好きなのは新しい価値観をどんどん吹き込んでくれるから。
そして彼が善悪二元論を好きじゃないところが好きなのかも。

今日は内田樹のたくさんある本の中から「街場のアメリカ論」の一部を触れたいと思います。
まえがきから引き込まれます。なぜアメリカは靖国神社参拝に抗議の声を上げないのか。
それは「日中韓の接近を阻止する」というのがアメリカの極東戦略の要諦だから。
なるほど、日本と中国、韓国との関係が少し解けたような気がしました。

あと、アメコミから見るアメリカの無意識が面白い。

「主人公は例外なく特殊な能力を持つ白人男性。スーパーマンもバットマンもスパイダーマンも、そのスーパーな本性を見せることを禁じられ、市民的な偽装生活を送ることを余儀なくされている。彼らはこの二面性のかい離に苦しんでいる。これが第一の条件。
スーパー・ヒーローとして活躍するのだけれど、どういうわけか必ず誤解されて、メディアからバッシングを受ける。これが第二の条件。

ヒーローは必死にがんばっているんだけれど、ちょっと手加減を誤ると、人々から「なんて乱暴な人なの」とののしられる。それどころか、うっかりすると「社会秩序を乱しているのは、お前が対峙している悪者たちではなくて、むしろお前のほうだ」といういわれなき非難さえ受けるようになる。そう言われてヒーローががっくりするという場面が必ずあります。必ず、ある。そこにかわいい女の子が出てきて、一度はメディアや風説を信じてヒーローに懐疑的になるんですけど、やがてヒーローの無私の美しい心を知り、「他の人がどれだけあなたを非難しようとも、私だけはあなたを信じてるわ」と励ましてくれる…。」

内田氏はこれこそ国際社会の中でのアメリカのセルフイメージだと説きます。ヒーローであるアメリカに少しは他の国も感謝しろよと言いたいのだが、それはあまりにも幼児的な欲求であることが分かっているがゆえにその抑圧された欲望が、物語としてスーパー・ヒーローの被る無理解と受難というストーリーに繰り返し回帰するとのこと。

うーん、この分析と切り口は素晴らしい!

紹介し出したらキリがありません。内田氏が20代の頃、厳格な玄米正食をし、そのおかげで体も精神もクリーンになったが、その価値観でまわりの人と接して友人を失って、健康よりも友人を選び、それからはスローフードもいいし、ファーストフードもよいという価値観に変わった話も面白かったです。
他にもアメリカでは禁欲的なワークアウトで超理想の肉体を作っている人とどうしようもなく太っている人の二極分化があり、結局両者とも身体からのシグナルを無視して身体に敬意を払っていないという話もまた興味深かったです。

また、アメリカの統治システムの話も秀逸。アメリカの統治システムはリスクヘッジを優先させており、それは建国時にすでに理想国家を達成した状態でスタートしたため、これ以上悪くならないためにどうしたらいいかという視点で作られているからだということ。
そのため権力の集中を許さず、多数の支配を徹底しています。

こんな知識が増えると世の中の見方が変わってくるから面白い!

本書とは関係ありませんが、スピリチュアルでは日本が中心となるというようなことを語っている本に何度か出あったことがあります。ボクはなぜアメリカじゃないのかと不思議に思っていました。トップレベルの学問の水準は圧倒的に日本よりも上だし、心理学、カウンセリング、スピリチュアルに関してもアメリカの方が知的レベルは高いです。
本書を読んで、なぜアメリカではないのかが分かった気がします。

アメリカ社会はエゴが大きいんです。アメリカは「善玉」対「悪玉」の対立が内在しています。だから超理想の肉体とぶよぶよの肉体が生まれます。国際社会でのアメリカこそが正義であることは周知の前提であるというような態度やアメリカこそスーパー・ヒーローであるという暗黙の価値観。
ひたすら自分を善の側に置き、善を追求し、悪を倒すという「エゴ」の拡大図がアメリカなんです。限りない理想や欲望の追求。それが文化の根底にある。
だから、エゴと対極にある非二元のスピリチュアルは相容れないことになります。

内田氏は本書の冒頭で、日本はペリー来航以来150年間アメリカを欲望してきたと言います。
本書を読んでアメリカに対する欲望がかなり減ったことが一番の収穫だったかもしれません。

ABOUT ME
西川佳宏(よっし~)
西川佳宏(よっし~)
境界線専門カウンセラー。境界線(バウンダリー)専門・心理カウンセリング「セルフコンパス」代表。 会計事務所・外資系証券会社・医療設備メーカーでの10年超の会社員経験を経て、2012年6月にセルフコンパス設立。英国HOLISTIC HEALING COLLEGE Integrated Counselling Diploma取得。心理カウンセラーとして境界線を適切に引くためのサポートを提供。 特に効果が高いのが人間関係の悩み、自己肯定感が低い悩み、過剰責任感・完璧主義の悩み、罪悪感の悩み、HSPの悩み、不安・恐怖の悩み、うつ・不安障害の悩み。 柔らかな雰囲気に加え、こころの悩みの本質をやさしく説明するのが得意。プロフィールの詳細はこちら

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