久しぶりのブログになります。
今日は、少し変わった視点で日本の未来について考えてみたいと思います。
日々、私たちは「成長」「進化」「新しい価値の創造」が善だと教えられます。
でも、本当にそれだけが道なのでしょうか。
価値創造と「進化の罠」
企業は、イノベーションや成長、価値創造を掲げます。
そして、それができる人材を求めます。価値を提供できるからこそ対価が生まれ、さらに価値を高めることが求められます。
しかし、本当に「進化し続けること=善」なのでしょうか。
たとえば、顧客管理システムを考えてみます。
機能を次々と拡張していけば、既存ユーザーには便利で価値が増します。
しかし、新規ユーザーにとっては複雑で分かりづらくなり、使う人が限定されてしまいます。
進化した結果、成長が止まる――このような矛盾が生じるのです。
Word・Excelの教え
私自身、古いバージョンと最新バージョンのWordやExcelを使う機会がありますが、正直なところ、大きな進化は感じません。
それでも、これらは今も世界中で主流の道具です。
なぜでしょうか。
WordやExcelは初期の段階で「道具としての完成度」に達していました。
そのため、機能を増やすよりも「誰でも扱える入口を残すこと」を優先したのです。
あえて進化を抑える戦略こそが、持続的な支配力を生んだのです。
多くのテック企業は、価値創造を追い求めるあまり、自己肥大の罠に陥り、市場が飽和して成長が止まることがあります。
個人も同様です。成長や価値創造を是とし、休むことを罪と感じると、最終的に自壊してしまいます。
長く生き延びるためには、「進化の止め方」を知ることが大切です。
日本は「成熟国家」としての道を行く
ここからは、日本の話に移ります。
日本の高齢化率は、令和6年10月1日時点で29.3%です。
総人口1億2380万人のうち、65歳以上人口は3,624万人です(令和7年度版高齢社会白書)。
世界で最も高齢化が進んだ国です。
この日本が、イノベーションや成長を模索するのは、熟年でベンチャー企業に入社するようなものです。
無理があり、適しません。
熟年は熟年としての力を発揮する役割があり、日本も国家として、成熟国家としての役割を担うべきだと思います。
日本が目指すべき方向性
1)スピードよりも維持を重視する
進化や変化を追うのではなく、「持続」と「安定」を優先します。
- エネルギーを節約する
- 少ない資源で高品質を維持する生産技術
- 効率的な社会インフラ
2)ケアと関係性を重視する社会モデル
効率性を追い求めるだけではなく、お互いに生かし合う社会を構築します。
- 経済的成長より「人の尊厳」と「支え合い」を中心にした社会
- 福祉・地域・世代間の相互扶助を基盤にした生活モデル
3)静かな技術と職人性による価値提供
日本は派手なイノベーションは不得手ですが、静かな革新、維持的イノベーションには強みがあります。
- 地味でも安全性・品質を極める医薬・素材・機械メーカー
- 熟練の感覚を技術に埋め込む中小企業
- メンテナンスや再生に価値を見出すリユース文化
「壊して新しく作る」のではなく、「生かして更新する」文化は、世界に誇れる日本独自の強みです。
4)成熟した文化の発信
日本はもともと、「自然との調和」「無常」「ほどほど」を大切にする文化を持っています。
- 消費を減らしても幸福度を高める社会設計
- スローな時間や静けさを価値とする文化輸出
- 終末期・老い・死を尊重する精神文化
これらは、「資源が限られた地球で人類がどう生きるか」という問いへの答えを提示する文化です。
日本の役割:存在で導くリーダーシップ
日本が果たすべきは、「進化の速さ」を競うことではありません。
「進化の方向性」を示すことです。
従来のように声高に方向を示すリーダーではなく、存在そのもので世界を照らすリーダーとして、成熟国家のモデルを示す。
それが、老いという一般的なネガティブをポジティブに変える力となります。
そのためには、私たち一人ひとりも成熟性を持ち、静かに知恵を発揮していく必要があるでしょう。
日本は、世界で最も熟年化した国として、静かに、しかし確実に、未来を支えるモデルを示すことができます。
進化の速さではなく、在り方の深さで世界を照らす――そんな日を、私は心から楽しみにしています。















