現実変化と解釈の二つのアプローチ
自分にとって嫌なことや不幸なことが生じるとき、癒やし・ヒーリングの世界では、取り組むアプローチとして、二つのアプローチがあると感じています。
一つは、なるべく嫌なことや不幸なことが起きないように「現実を好転させる」アプローチです。
もう一つは、嫌なことや不幸なことの「捉え方を変えて」、現実とうまく付き合っていくアプローチです。
前者は、癒しの世界であれば、スピリチュアル系、ヒーリング系が多く、「引き寄せの法則」が代表的です。
後者は、心理カウンセリング系、セラピー系が多く、「認知行動療法」が代表的です。
前者と後者は、排他的な面がありますが、私はどちらも大切だと思っています。
現実変化のケース
たとえば、自己否定が強い状態では、実際に現実が悪くなるケースと、現実を悪く捉えるケースがあります。
たとえば、皆さんの周りで、注意を受けやすい人っていませんか?
注意を受けやすい人は、ミスもありますが、ミスの数以上に注意を受けやすいように思えます。
逆に、注意を受けにくい人は、ミスをしても注意をされにくかったりします。
一つの要因として「自己否定」があります。
自己否定が強いと、卑屈な感じがして、相手の立場からすると責めやすくなります。
また、自己否定が強いと、怒りを抑圧しがちで、その抑圧されたエネルギーが他者に出るという現象があり(専門的な言葉で逆転移)、他人から怒られやすかったりします。
「なぜかこの人には怒りたくなる」「なぜかこの人といるとイライラする」と感じた経験は誰しもされているのではないでしょうか。
自己否定が強い人は、実際に否定される出来事に遭いやすいという現実になりがちです。
解釈(捉え方)のケース
もう一つの視点が、解釈・捉え方です。
自己否定が強いと、他者が自分を否定しているように感じやすくなります。
他者の何気ない言動に対し、「この人は私のことが嫌いなんだ」とか「私が迷惑をかけているから嫌がっているんだ」などと捉えてしまいます。
現実を自分にとって都合が悪く捉えてしまうのです。
この「実際に現実が悪い方向に向く」+「現実を悪く捉える」のダブルコンボで、非常に苦しくなってしまいます。
そのためには、「現実を良い方向に持っていく」+「捉え方を変えていく」の両方のアプローチが必要になるでしょう。
現実を変えにくいときは捉え方のアプローチから
「現実を好転させる」アプローチと「捉え方を変える」アプローチはどちらも大事ですが、現実を好転させる状況が難しいときは、まずは捉え方を変えるアプローチに注力したほうが効果的です。
たとえば、自分の性質・資質面について困っているとします。
分かりやすいのが発達障害系ですね。
薬で改善するというケースもありますが、資質的な面はなかなか変えられません。
その場合は、その資質をネガティブ一辺倒に捉えるのではなく、ポジティブな面も探っていったり、ネガティブな捉え方を和らげて、なるべく中立に持っていくことが望まれます。
このとき、自分の資質を「ただあるがまま受け入れている」状態になります。
否定感が少なく「仕方ないものとして受け入れている」状態です。
その上で、日常生活や他者とのかかわりの中で弊害があるものは、工夫をして欠点が出にくくしたり、その資質の長所の面が出やすい環境づくりをしていく努力が求められます。
これは「現実を好転させる」アプローチですね。
否定感が強い状態で、現実を好転させようとするのが、多くの人のアプローチですが、それだと成功率が下がります。
無理が出てバランスを崩しやすくなります。
まずは「捉え方を変えて」否定感を少なくしてから、現実を好転させる取り組みをやっていったほうが成功率が高くなるでしょう。
自己肯定感が高まると好影響
現実好転と捉え方の両方に大きな好影響をもたらすのが「高い自己肯定感」です。
自己肯定感が高い人のほうが、現実をよい方向に持って行きやすくなります。
特に「捉え方」の面は顕著に現れます。
自己肯定感が低いと、世界や自分をネガティブに解釈しやすく、自己肯定感が高いと、世界や自分をポジティブに解釈しやすいため、両者では精神的な安心感が大きく異なります。
この安心感が、取る行動の違いにつながり、そこから派生する結果の変化につながります。
そのため、癒やし・ヒーリングの世界では自己肯定感を高めることがよく言われています。
とはいえ、自己肯定感を高めることは容易ではありません。
地道なトレーニングが必要です。
早く解消したい人ほど、魔法的な方法に惹かれ、一気に解消できる方法を望みますが、急激に解消しようとすると無理や弊害が出がちで、リスクが高くなります。
心の力を高めることをオススメ
私がオススメしているのは「心の力」を高めていくアプローチです。
心の力が高い人は、嫌な現実があっても受け止めて、対処することができます。
それができれば、嫌な現実を「終わった過去」として引きずることなく次に進むことができます。
ところが、心の力が低い人は、嫌な現実を受け止めて処理することができないので、そのことに悩まされます。
過去の出来事に悩まされ、それが今に影響を与えます。
それは不安にもつながります。
不安が強いと、できるだけ嫌な出来事に遭わないような「現実好転系」に惹かれます。
しかし、心の力が低いままでは、次に困難がやってきたときに対処できません。
困難がない現実を望むのは無理があり、不可能なことを求めて努力してもその努力は実りません。
それよりも、心の力を高める努力をしたほうが、ずっと現実的で効果が見込まれるというのが私の意見です。
心の力は自己肯定感にもつながる
また、心の力の高さは、自己肯定感の高さにもつながります。
なぜ、自己肯定感が低くなっているかというと、過去の嫌な体験が未消化になっていることが大きな影響を及ぼしていると考えられています。
未消化というのは、他者から否定される、あるいは、自分が自分を否定することがあって、そのときの心理的葛藤が解消されていない状態です。
このとき、「言いたいことを言えなかった」「相手に分かってもらえなかった」などの心残りがあり、それらが未消化となって、この出来事を心理的に引きずっていて、それが自己否定の一因につながっています。
こういった未消化なものがたくさんあるほど、自己肯定感は低くなりがちです。
心の力があれば、これらに向き合って対処することができるため、結果的に自己肯定感を高く維持することができます。
ところが、心の力が低ければ、これらに向き合うことができません。心理的に耐えられず、心理セラピーをしても難しいケースはよくあります。
心理セラピーの効果を決めるのは、実は心の力次第と言っても過言ではありません。
そのため、心理セラピーのテクニックを極めていくよりも、心の力という基本的な力を育成するほうが重要だと私は考えています。
心の力を高めて、未消化な心理的葛藤を消化し、自己肯定感を高めることで、世界の捉え方がずいぶん自分に優しいものになるでしょう。
心の力が高いと現実をうまく好転させられる
また、心の力が高いと、困難に対して、負の感情に飲み込まれずに対処することができます。
負の感情を抱えているときは、冷静に周りを見ることができず、やることなすことうまくいかなかったりします。
理性の判断ではなく、感情優位の行動になってしまうため、結果的に現実がうまく行かなくなって、余計にネガティブな感情が生じる結果になるという悪循環に陥ってしまいます。
理性で対処するには、心の力を養って、心理的な問題に向き合って対処できることが望まれます。
結果、現実が好転しやすくなり、人生をよりよい方向に進めることができるでしょう。