「助けてもらえない」という深い思い
カウンセリングをしていると心の根っこに「いざというとき助けてもらえない」という思いを持っている人を見かけます。
症状として出ている悩みは不安障害とかうつ症状ですが、根っこにあるこの思いに取り組んでいく必要があります。
一人で解決しなければいけないと思っている
「助けてもらえない」と思っているので当然の発想として「一人で解決できなければならない」と思っています。
そうなると何かが「できない」と問題が生じるので「できる」ということに強いこだわりを持つようになります。
できない自分に対する自己否定が拭えません。
- 「できる」に強いこだわりを持つ
- 「できない」と強い自己否定を持つ
いざというときに助けてもらえない(と無意識で思っている)ので一人でできないとまずいのです。
過剰に不安を抱えがち
また、いざというときに助けてもらえないという思いを持っていれば、必要以上に不安が出ます。
自分がまずい状況に陥ると助けてもらえないため、その状態になることを強く恐れます。
たとえば、健康状態が悪くなるとか、老後の心配とか、自分が衰えることへの恐れが大きくなります。
金銭面での不安も強くなります。
いざというときに助けてもらえないのであれば、病気やお金や失業などの心配が強くなるのは当然です。
本当は助けが欲しいのに拒む理由
「助けてもらえない」と思っている人は助けてもらえないがゆえに「一人で何でもできなければいけない」と思っています。
ところが、はじめから「助けてもらえない」と思っていたわけではありません。
人は当然幼少期には一人では何一つできません。
そのため、誰かに助けを求めます。
このとき、助けが得られないと、「助けてもらえない」という思いが芽生えます。
結果、助けてもらえないのであれば、一人でがんばるしかないと思い、今度は周りの助けを求めず、自分で何でもやってしまうようになります。
「一人では生きていけない」から「助けがほしい」
助けを求めても得られなかった体験から「助けてもらえない」
いざというときに助けてもらえないのであれば「一人で生きていけるようにならなければならない」
本当は助けが欲しいのに、助けを拒み、自立を目指す
こういったメカニズムになります。
もちろん、人によって考え方は違うので一例として参考にしてください。
助けてもらえないと思い込んでいる理由
どうして「助けてもらえない」という感覚があるのかというと、先に書いた通り、助けを求めても助けてもらえなかった経験があるからです。
幼少期の家庭環境で必要な助けが得られていなかったということが大きく影響していると思われます。
そのため基本的安心感が健全に育まれていません。
根本ニーズは安心感
そのため、そういう人の根っこにあるニーズは「安心感」です。
安心できることを強く求めています。
不安を与えるような他者の行為や出来事や状況を過剰に恐れることになります。
それが強く出ると不安障害に至ると考えられます。
助けてほしいというニーズ
基本的安心感が欠けている人のニーズは「助けてほしい」「味方になってほしい」「寄り添ってほしい」などというものです。
「助けてもらえない」という思いがありながらも、どこかでそれを払拭したい思いも強く持っているため、潜在的に助けを求めています。
意識では自立したいと思いながらも、パートナーに依存しやすくなります。
孤独感の問題も生じやすいです。
助けてもらえないパートナーに対しては精神的にかなり振り回されることになります。
助けや寄り添いや味方である感覚が得られないと恐れや怒りや悲しみといった感情につながります。
助けてほしいのに助けを求めない
こういうタイプの人は根っこにあるニーズが「安心感」で「助けてほしい」というニーズが潜在的に強くあります。
しかし、先に述べたように「一人でできなければならない」と思っているため、助けを求めることを心理的に拒否します。
そのため、「助けてほしい」にもかかわらず、「助けを求めない」ということになります。
結果として、助けは得られず、「私は助けてもらえない」という思いを募らせることになり、苦しくなります。
どうやって解消すればよいか?
では、どうすればよいかというと「助けてもらえない」という思い込みを緩めていくことになりますが、深い思いであるほど簡単に緩めることはできません。
基本的安心感を高めていく取り組みが必要ですが、簡単に行動化できそうなところをこの記事では挙げていきます。
まずは自分に「助けてもらえない」「一人でできなければならない」「助けてほしい」といった思いがあることを認め、意識化することが大切です。
そして、実際に助けてもらう経験を積むことが「助けてもらえない」という思い込みを緩めることにつながります。
助けを求める
安心できるためには、次のようなことが役立つでしょう。
- より多くの人とつながりを持つ
- いざというときに助けてくれる公的サポートの制度を勉強して知る
- 助けてくれる仲間を増やす
- 専門家(無料・有料問わず)に相談する
- 助け合いの場・コミュニティに参加する
- 自分で何でもやろうとせず、人に任せることを増やす
- 「助けてほしい」「手伝って」という言葉を気軽に出す
- 他人の助けを受け取る(拒絶しない)
- 助けを受け取ったときに「申し訳ない」ではなく「喜び」「感謝」で返す
- 自分が極度に追い込まれる状態まで我慢しない
- 人は一人では生きていけないことを理解する
- 「助ける」ことの価値もあるが「助けてもらうこと」の価値を理解する
- 自分の根本ニーズをパートナーや友人に分かってもらう
境界線はつながりを持つ上で役立つ
人とつながりを持っていく上で、境界線は知っておいたほうがよいと思います。
単に人とつながれば安心できるわけではありません。
悪影響のつながりは断ったほうがよいですし、悪いエネルギーは自分でブロックできたほうがよいでしょう。
よい人やエネルギーとつながっていくことが大切です。
助けてもらうことそのものが価値
助ける行為は助けられる行為があってはじめて生じるものです。
助ける行為に価値があるのは分かりやすいですが、助けられる行為は「未熟」「ダメ」というイメージがあるかもしれません。
助ける人は、人助けをして精神的報酬を得ています。
但し、相手が喜ばない場合や、相手にとってプラスにならないときは精神的報酬は発生しません。
助けられる側が助けによってプラスになったり、喜びがあれば、それは助ける側に「報酬」を与えることになるのです。
助けてもらうことは自分にとってプラスになるだけではなく、相手にとってもプラスになるわけで、それ自体が大きな価値なのです。
さらに言えば、人には存在価値があるため、必要なときに助けを求める権利があります。
問題となるのは「いつも助けてもらう」とか「いつも助ける」という場合です。一方通行になるとバランスが悪くなります。
助けてもらうことを意識して増やす
助ける側ばかりまわる人は、助けてもらうことを意識して増やしていきましょう。
「相手に助ける機会を与える(奪わない)」と考えてもよいかもしれません。
助けてもらい、それを喜びや感謝で受け取れば、よい循環で回っていきます。
助けてもらっていることを意識(再認識)する
実際に助けてもらうこと以外にも、助けてもらっていることを意識することも大切です。
私たちは一人では生きていけず、直接助けをもらってはいないかもしれませんが、間接的に多くの人(人以外ももちろん!)にものすごく大きな助けをもらっています。
それが意識できていないため「助けてもらっていない」と思っているのですが、本当は「めちゃくちゃ助けてもらっている」のです!
間接的に助けてもらっていることを考えてみたり、誰かと話し合ってみるのもよいワークになると思います。
すでに「助けてもらっているんだ」と腑に落ちれば、自然に安心感が芽生えてくるでしょう。
「助けてもらえない」という思い、あるいは「一人で何でもやらなければいけない」という思いにピンと来た人は、ぜひ参考にしてみてください。