対人関係の問題は、バウンダリー(心の境界線)がきちんと引けると、解決できるケースがたくさんあります。
バウンダリーとは
バウンダリー(境界線)とは、自分と他人との適切な境界線を引くということです。
そして次のことがきちんとできることです。
- 他人の問題を自分の問題にしないこと
- 他人の責任を自分の責任にしないこと
- 他人がやるべきことを自分がやらないこと
バウンダリーが引けないことによる問題
バウンダリーがきちんと引けていないとこのような問題が起こります。
仕事、恋愛、親子の例を挙げてみました。
ほんの一例です。
仕事
- 部下が仕事をしないので、つい自分でやってしまう
- 自分の仕事量が明らかに多い
- 残業するのが当たり前になっている
- 関係ない部署の人の面倒を見ている
- よその部署の口出しをしている
- 頼まれてもいないアドバイスをしている(されている)
- 頼まれた仕事を断れない
- 本来はやるべきではない他部署の仕事をやっている
- 部下に仕事を任せられない
- 上司がやるべき問題を代わってやっている
- 権限を逸脱して、非難を浴びている
恋愛・夫婦・友人関係
- 仕事も家事もほとんど私がやっている
- 私が相手の言うことばかり聞いて、相手はやってくれない
- 負担量が明らかに自分のほうが多い
- 自分は相手のニーズをかなえているのに相手はニーズをかなえてくれない
- 相手が暴力をふるう
- 子育てはすべて妻に任せている
- 家庭のことはすべて妻に任せている
- お金の使い方はすべて夫が決めている
- 夫の頼みを断れない
- 妻の言いなりになっている
- 夫に頼みごとができない
- 頼まれてもいないアドバイスをする(される)
- いつも遠距離恋愛
- いつも不倫関係
- 相手に本音が出せない
- 本心、素の自分をさらけ出せない
- つい、おせっかいをしてしまう
- 相手を助けないと気が済まない
- 相手の役になっていないと気が済まない
- やりたくないことを押し付けられても断れない
- 友人なのに上下関係になっている
親子
- 親が望む生き方をする
- 親の期待に応えられる生き方をする
- 親が喜ぶようにいい子になる
- 親がやるべきことを子どもがやる
- 親に感情のケアをしている
- 子どもに自分の理想を押しつける
- 子どもが楽に生きられるように進路や職業を選んであげる
- 親が子どもを過保護にする
- 親の価値観を子どもに押し付ける
- 子どもがやるべきことを親がやる(宿題をやってあげるとか)
- 子どもがかわいそうでほっておけない
- 子どもにいちいち注意する
これらはごく一例にすぎません。
もっともっとたくさんあります。
大きく言えば、次のストレスになります。
- 境界線を引けないことによって、本心ではやりたくないことをやっていることによるストレス
- 境界線を引けないことによって、他者の行動、感情のケアをすることによるストレス
- 境界線を引けないことによって、他者をコントロールしようとすることのストレス
境界線を引けないことのストレスがあるとどうなるか?
自分が境界線越えをされる場合、このストレスがあるとどうするかというと、このストレス源を避けるようになります。
よくあるパターンが距離を置くパターンです。
人付き合いを避けたり、恋愛を避けたりします。
あるいは、自分をさらけ出すことをしなくなります。
避けることで自分の身を守る生き方ですが、当然、人生の喜びも失ってしまいます。
どうしても避けられないケースはストレスがたまり続け、その結果、心身の調子が崩れてきます。
逆に相手の領域に入りすぎるパターンもあります。
おせっかいを焼きすぎたり、出会ってすぐに親密になろうとしたり、ずうずうしかったりします。
相手から嫌がられたり、長期的な関係や心から気を許せる関係が築けなくなります。
もし、きちんとバウンダリー(境界線)が引けていたら
バウンダリー(境界線)がきちんと引けていたら、上記のような問題はなくなります。
そして次のようなプラス面があるでしょう。
仕事面では、
- 部下を信頼できるようになり、部下はイキイキ仕事ができるようになる
- 無理な仕事を断り、質の高い仕事をキープできるようになる
- ワーク・ライフ・バランスが築ける
- 人間関係のトラブルに巻き込まれず、仕事に集中でき、結果的に良い成果が出せる
恋愛・夫婦・友人関係では、
- 相手がやるべきことを相手がやってくれるようになる
- 自分の素を相手にさらけだせるようになり、付き合い方が楽になる
- お互いを信頼でき、思いやりを持ってお互いのニーズをかなえあえる関係になる
- 恋人として、夫婦として、パートナーとして、お互いの愛情が高まる
- 本質的に合わない相手とはきちんと縁が切れる
親子関係では、
- 子どもを信頼でき、生き方の押しつけをしなくなる
- 自分の人生にもっとフォーカスできるようになる
- 自分の人生を自分で決められるようになる
- 親が言うことをうまく受け流し、適当にあしらえるようになる
上記は一例なので、もっともっとメリットがあります。
境界線が引けるようになると、人間関係はぐっと心地よくなります。
なぜ、バウンダリー(境界線)が引けないか?
このようにたくさんのメリットがあるバウンダリーを引く行為ですが、そもそも適切にバウンダリーを引けなくなった原因はなんでしょうか?
もちろん、個人個人によって理由は違いますが、よくある例を紹介します。
幼少期の養育環境
親が過保護、過干渉の場合、子どもは自分がやるべきことをやらなくなります。
また、やりたくてもやる能力や自信が培われません。
親が暴言や脅しで厳しく育てた場合、子どもは自分のバウンダリーが築けなくなります。
バウンダリーを築いても築いても親が強制的に入り込むので、バウンダリーが築けずに自分のアイデンティティを失います。
このようなケースでは、バウンダリーをうまく築けないので、簡単に相手に入り込まれたり、あるいは不用意に相手の領域に入ったり、極端に距離を取ったりします。
親が自分の都合や価値観を子どもに押し付けて育てた場合、子どもは親の顔色をうかがったり、親を喜ばすことや役立つことをすることで親の愛情を得ようとするケースがあります。
このケースでは、他者の思いや感情のケアを日常的にやってしまいます。
つまり、相手の境界線を越えてしまうことが習慣となっています。
それが当たり前になってしまいます。
そして、自分が相手の境界線を越えると同時に、相手にも簡単に自分の境界線を越えられてしまいます。
相手の思いや感情をケアすることで、自分の思いや気持ちが二の次になり、相手が求めることに対してNoが言えません。
ショックな出来事による心の傷
もちろん、幼少期の親子関係だけではありません。
何かショックを受けて心の傷になると、そこは触れられたくない場所になります。
すると、その部分に対しては過剰に防御するので、距離を置きすぎるとか、自分をさらけ出さないようになります。
心の傷がたくさんある人ほど、防御の場所や強度が強くなるので、守る度合いも高くなるのです。
バウンダリーを引くことと他者に対して冷酷であることの区別
バウンダリーを引くことの重要性を学んだ人がしばしば疑問に思う点が、他者ときちんと線引きをすること自体が相手に対して冷たい行為をすることになるんじゃないかということです。
「境界線を引く=相手を突き放す」
というようなイメージです。
そういうイメージがあると、境界線を引くことへの抵抗になるので、当然境界線が引きにくくなります。
たとえば、母親の介護のケースを挙げましょう。
仕事が忙しくてなかなか時間が取れないケースではどうすればいいのでしょうか?
それは境界線の極端な解釈になります。
むしろ、境界線をきちんと引けていない人が無理やり引こうとするケースでしょう。
境界線を引けていなくて我慢を重ねているからそうなってしまうのです。
きちんと境界線が引けていたら、自分がどうしたいかを優先します。
自分の境界線内の、自分の心を大切にします。
正しい答えとか正解はありません。
今は、母親の介護を精一杯したいと思って、あえて境界線を越えて、仕事を止めるかセーブして介護をしてもいいです。
あるいは、母親の介護は業者や他人に任せて、金銭的な負担や空いた時間でのサポートをすることもよいです。
そちらのほうが結果的に自分にも相手にも優しく思いやりが持てるのです。
もう一度書きますが、境界線を引けてなくて我慢しすぎるから、エゴが暴発してしまうのです。
自分の気持ちに我慢を重ねているのでストレスがたまりすぎて極端な行動になってしまいます。
境界線を引くことがときには相手を突き放すことになることもあるかもしれませんが、それはごく一部に過ぎません。
そして相手を突き放すことが必ずしも悪いことではなく、相手にとって必要なケースもしばしばあります。
「相手を突き放す=冷酷」
というのも一つの解釈に過ぎません。
突き放して自立を促す愛もあります。
相手のために厳しいことを言う愛もあります。
境界線を越えないことが大切なわけではない
いつも境界線を越えないことが大切なわけではありません。
それは無理です。
ときには越えることもあります。越えられることもあります。
特に身近である親子関係、夫婦関係、家族関係、親友関係では越えてしまうこともしばしばあります。
境界線を越えないこと、越えさせないことにこだわりすぎると、かえって苦しくなります。
境界線は自分を楽にするツールとして使ってください。
バウンダリー(境界線)を引けるようになるための7つの方法
では、境界線を適切に引けるようになるためにはどうすればよいでしょうか?
7つの方法を紹介します。
①境界線を意識する
境界線を引けるようになるには、境界線を意識することが大切です。
境界線を意識することは本当に本当に大切です!
これまで無意識で境界線を越えられてしまう、越えてしまうケースが多かったはずです。
これからは境界線を意識するようにしてみましょう。
境界線を意識するとは、境界を越えられていること、越えていることを自覚するということです。
境界線を越えられたときに感じる不快感のシグナルをきちんと受け止めることが大切なポイントです。
ここを流したり抑圧すると、無意識に境界線を越えられたままになります。
「あっ、今、私は相手の感情をケアしているわ」
そこに気づけば、意識的に行動が取れます。
「ここは境界線を引いて、相手のことを信頼して放っておこう」
と行動を改めることができます。
まずは境界線を意識することが大切です。
境界線を意識する癖ができれば、境界線を引くのがうまくなっていきます。
②自分を大切にすることを決意する
境界線を越えられているとき、それが自ら望んだものではない場合、きちんと境界線を引いて、境界線から出てもらう権利があります。
境界線を越えられてしまう人は、自分よりも相手のことを気にしている人が多くみられます。
そのこと自体が、自分が相手の思いや感情をケアしているということなので自分も境界線を越えてしまっていることに気づいてください。
自分を大切にすることを意識し、強く決意することで、境界線を引く覚悟ができます。
決意は何度も何度もしてください
この覚悟は、自分のニーズやNoを主張することへの大きな勇気となります。
③自分のニーズを優先する
自分のニーズを優先するという言葉を聞くと、
自分勝手
わがまま
利己主義
思いやりがない
などと思う人もいます。
しかし、自分のニーズを優先するのは自分勝手ではありません。
当たり前の権利です。
私たちは自分のニーズを満たす自由と権利があります。
でも、自分勝手だと思うのは、
自分が相手のニーズを満たしているのに、
相手は自分のニーズを満たしてくれていないから、
「自分勝手だ」となるわけです。
しかし、それを選んでいるのは自分自身です。
相手のニーズを必ずしも満たしてあげる必要性はありません。
相手のニーズを満たすことを断る権利があります。
相手が断っているのに強引に自分のニーズを満たそうとするのは「自分勝手」「わがまま」「利己主義」がまさに当てはまります。
しかし、単にニーズを主張するのは自分勝手でもなんでもないごく自然な権利です。
人間関係はニーズのかなえあいとも言えます。
自分だけが相手のニーズを満たしていたら、不満があるのは当たり前です。
そのときはニーズを満たすことを止めるか、自分もニーズを満たしてもらえるように主張することができます。
それでも相手が拒否すれば、その人間関係を見直せばいいのです。
自分のニーズを優先してもいいということ、
自分のニーズを主張することは自分勝手ではないこと、
そこを知っていただければと思います。
但し、ニーズを主張するときは適切な言い方があります。
相手を尊重しつつ、自らのニーズを適切な表現で言うことが大切です。
これを「アサーション(アサーティブ)」と言います。
④アサーション(アサーティブ)を学ぶ
アサーションとは、自分も相手も大切にした自己表現のことで、その状態をアサーティブといいます。
私はOK、そしてあなたもOK
この状態がアサーティブです。
アサーティブのテクニックを使って、アサーティブに表現することで境界線が引きやすくなります。
境界線を意識できたとしても、境界線を越えて入られることを拒否できないケースもたくさんあります。
ちゃんとNoが言えたり、ニーズが言えれば、自分の領域に入ることを拒否することができます。
アサーティブのテクニックの一例を紹介します。
- 謝罪
- 断る理由
- 断り
- 代替案
たとえば、上司から残業を頼まれたときの断り方です。
- 謝罪:申し訳ございません。
- 断る理由:以前から約束していた用事がありまして
- 断り:どうしても今日は残業できません。
- 代替案の提示:明日の朝一番でよければその仕事をやります。
アサーティブな断り方のテクニックを使うことで、Noを言いやすくなるでしょう。
アサーティブはテクニックだけではなく、自らの権利を含めた考え方を学ぶことでもあります。
アサーティブの本やセミナーもオススメです!
下記の本はとてもよかったです。
⑤恐怖を解放する
境界線を意識し、アサーティブなテクニックを学んだとしても、なかなかNoが言えない方も多いでしょう。
そういう方は、Noを言うことに対して、恐怖や困ることがあるから言えないのです。
たとえば、Noを言うと
相手から嫌われる
相手から怒られる
頼んだことをやってもらえなくなる
低い評価をされる
役立たずと思われる
仲間外れにされる
攻撃される
仕事やメリットを失う
これらの恐怖に対して感情解放テクニックを使って解放することが有効です。
恐怖のエネルギーを消去することができます。
すると、断然Noが言いやすくなります。
感情解放テクニックはEFTが有名です。
EFTのやり方はこちらの動画「EFTのやり方」で詳しく解説しています。
私のオリジナルメソッドの呼吸を使った感情解放の方法であるBERT(バート)はEFTよりもシンプルで簡単です。
とても効果が高い方法です。
メルマガを登録してくださった方にやり方テキストと動画をプレゼントしています。
⑥境界線についてもっと詳しい知識を学ぶ
動画「境界線入門講座」
無料オンライン講座「境界線入門講座」の動画を見ることで、境界線をもっと学ぶことができます。
こちらの動画はメールマガジン「セルフコンパス通信」の購読特典です。
登録後すぐ見ることができますので、ぜひご登録ください。
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本「本当は傷つきやすい人たちへ」
また、本「本当は傷つきやすい人たちへ」で境界線とアサーションを特に詳しく説明しています。
こちらもご参考ください。
⑦境界線セミナー・カウンセリングを受ける
境界線が分かっていてもどうしても引けないときは、知識だけでは解決が難しいかもしれません。
境界線を引くことができなくなった原因として、幼少期の養育環境やショックによる心の傷を挙げましたが、そこは頭でいくらわかっていてもどうにもならない領域です。
なぜなら、心の傷にはたくさんのネガティブな感情のエネルギーがくっついているので、いくら本を読んだり、このような知識を得ても、どうにも変えられません。
「わかっちゃいるけどどうしようもない」のです。
境界線を引きたくても引けないケースにどう対応すればよいかを学びたい場合は、境界線講座6か月コースや個人カウンセリングがオススメです。
セルフラブが高いと境界線は自然に引ける
セルフラブとは、自分のありのままを受け入れている度合です。
セルフラブが高いほど、自分のありのままを受け入れています。
セルフラブは、自己価値、自己愛、自己肯定感と言い換えてもよいでしょう。
理想の自分にいかに近づいているかの指標ではありません。
それだと理想ではない自分になったときに自己批判があるので、セルフラブは高いとは言えません。
文字通り、ありのままを(自分の良いところも悪いところもそのままを)受け入れている度合いです。
セルフラブが高いと、自分を大切にする行動が自然にできます。
なので、相手が境界線を越えてきても、自然に拒否することができます。
あるいは誰かのサポートを借りて、状況を打破することができます。
また、セルフラブが高いと相手のそのままを受け入れている状態なので、アサーティブな態度が自然にできます。
自分も相手もOKなので、相手のことを信頼、尊重することができるため、相手の領域に入ることも自然に少なくなるでしょう。
セルフラブを高めることで境界線が引きやすくなりますが、同時に境界線を引くことでセルフラブが少しずつ高まっていくとも言えます。
境界線を引いて自分を守ることは自分を大切に扱う行為だからです。
セルフラブを高めることは一朝一夕には行きません。
もし、セルフラブについて詳しく知りたい、セルフラブを高める方法を具体的に知りたいという方は、本「恋愛・職場の人間関係が驚くほどうまくいく」が参考になります。
こちらもぜひ読んでみてください。