思考や思いそれ自体に力があるという誤解を解く
私を含めて、カウンセラーやヒーラーの方々は「私たちを苦しめているのはビリーフだ」と説きます。
ビリーフは、思考や思いとも受け取れるので、あたかも思考自体にすごい力があるように思えます。
細胞生物学者であるブルース・リプトン博士の名著「思考のすごい力」は、素晴らしい本ですが、タイトルが残念です。
原題は「The Biology of Belief」で、直訳すると「信念の生物学」となります。
「思考のすごい力」の方がインパクトは大きいので致し方ないところかもしれませんが、これだと「思考」自体に何やらすごい力があると受け取っても無理はありません。
著名な方も思考の重要性を語っていますし、「思考が現実化する」という自己啓発の本もあります。
「思考」や「思い」に力があると勘違いしても当然だと思うので、今回のブログではその誤解を解こうと思います
思考やビリーフなどの言葉の違いを整理する
「思考」「思い」「ビリーフ」「信念」「思い込み」「価値観」「べき」…など似たような言葉がありますが、意味を整理したいと思います。
まず、思考と思いの区別ですが、思考とは思いや考えを巡らせる精神の活動のことです。
思いは、例えば、「空が青い」とか「きれい」とか「おなかが空いた」というようなものです。
思考は、例えば、「空がきれいだなぁ。歩いて駅まで行こうかな」とか「今日のご飯は何を食べようかな。パスタにしよう」といったもので思いを巡らせることです。
思い=思考という意味で使っている人もたくさんいます。
ビリーフは、日本語で信念のことで、ある思いを信じていることです。
思い込みも同じ意味ですが、固定観念や偏った見方というようなニュアンスもあります。
価値観もよく使われる言葉ですが、価値観は大切にしているもののことです。
価値観はビリーフと同じように使われますが、厳密に言えば異なります。
価値観は重要性を表すもので、ビリーフは重要かどうかにかかわらず思いを信じていることです。
「こうするべき」「こうあるべき」という「べき」は、価値観に基づくルールです。
ビリーフの一部とも言えます。
思いに力があるかを経験から見ていこう
思い自体に実際に力や影響力があるかどうかを実際の経験からきちんと見ていきます。
本に書いてあるかどうかではなく、誰かが言っているかどうかではなく、皆さんの経験から感じてみてください。
本当に思い自体に力があるかどうかをよく確かめてみてください。
これらの思い自体に力はないことが分かるはずです。
思い、それ自体が何かを作り出すことはありません。
「思考が現実化する」「引き寄せの法則」「100%自分原因説」では、「思い」自体が何かの力を持っているかのように書いていますが、まったく違います。
信念が現実に強い影響を与えていることを拡大解釈したもので、間違っています。
思いが力を持つと信じることの弊害
思い自体が力を持っていると信じてしまうと、思いをコントロールしようとします。
しかしながら思いは、コントロールできないので余計な苦しみを生むことになります。
ネガティブな思いが生じることを抑圧すると、余計ネガティブにとらわれてしまい、抑圧することの苦しみと、未来にネガティブなことがやってくるんじゃないかという不安の二重の苦しみが生じます。
思いを信じることで力が生まれる
「思い」自体には力はないのですが、思いを信じることによって力が生まれます。
皮肉にも、「思考が現実化する」を信じるがゆえに、力が生まれるのです。
ここで言う「力」とは、思考が現実化する力のことではなく、思考が現実化することを信じることによって生じる思いや行動の変化を促す力のことを指しています。
もうひとつ例を出していきましょう。
何か影響を与え始めるのは、何らかの価値判断があるときです。
7時45分に起きないと会社に間に合わないAさんが、8時に目が覚めたとしましょう。
「今、朝の8時だ」
これは単なる「思い」です。
「寝坊した」
「速攻で準備しないと会社に間に合わないかもしれない」
「遅刻してはいけない」
「上司から怒られる」
思考が働きます。
焦りやイライラなどの感情が起こるでしょう。
このとき、もし「遅刻してはいけない」とか「遅刻すると上司に怒られる」というビリーフがなければ、特に苦しくなりません。
「遅刻してはいけない」というビリーフがあるから、行動に影響を与えます。
食事抜きで早く着替えてダッシュで向かうでしょう。
このとき、「遅刻してはいけない」というビリーフは力を持っていると言えるでしょう。
ただ、常にこのビリーフが力を持っているわけではありません。
時間の約束があるときや遅刻しそうなときにこのビリーフが力を持ちます。
時間を気にせず過ごしているときは、このビリーフを持っていても特に発動しません。
ビリーフは常に影響力を持っているわけではなく、特定の状況でのみ影響を持ちます。
「遅刻してはいけない」というビリーフがあれば、遅刻しないように行動します。
また、遅刻しそうな人を見るとハラハラしたり、遅刻した人にイライラしたりします。
自分の行動を制限したり、相手の行動を変えようとします。
たくさんのビリーフが私たちに影響を与えている
私たちはビリーフをたくさん持っています。
たくさんのビリーフは、私たちの行動に影響を与えます。
ビリーフ自体が私たちをコントロールしていると言っても過言ではありません。
そういう意味でビリーフには力があると言えるでしょう。
とはいえ、この力はあくまで思いや行動を変える力です。
決して現実化する力ではありません。そんなものはありません。
ビリーフが影響する力は魔法的な力ではない
引き寄せの法則は、何か魔法的、奇跡的な力を想定しています。
ここが誤解を生むところです。
ビリーフは行動を変え、現実を変えますが、奇跡的な変化が起こるわけではありません。
「私はお金持ちだ」と信じたら、1か月後に宝くじが当たったり、年収が10倍になるとか、そんなことはありません。
これも本に書いてあるとか、誰かが言っているとかではなく、実経験からよく見てください。
信じていることが現実化するわけではありません。
月は2個あると信じれば、2個になるのでしょうか?
月は地球より大きいと信じれば、実際に大きくなるのでしょうか?
雨が降ると信じれば、雨が降るのでしょうか?
ありえないですよね。
ビリーフが影響を持つ力の範囲を理解する
もう一度繰り返しますが、思いを信じることで力が生じます。
思いや行動を変える力です。
また、思いを信じることで、生体反応にも変化が現れます。
もし、家の中に虫がいることを想像すると、急に怖くなって身体が緊張し、ストレス防衛モードに入ります。
ストレスモードが長期間続けば病気にもなるでしょう。
ビリーフが及ぼす肉体の変化の力は西洋医学では見過ごされていますが、実はかなりの影響力があります。
冒頭に紹介したブルース・リプトン博士「思考のすごい力」に詳しく説明されています。
なので、ビリーフは力を持っています。
きちんとその力を理解することが重要です。
力の範囲を理解することが大事です。
自分を苦しめる主張は受け取らないこと
簡単に思考が現実化することや、ネガティブな思いがネガティブな現実を引き寄せることを信じちゃわないようにしてくださいね。
そういった主張をしている人を好意的に解釈すれば、「あなたにはもっともっと可能性がありますよ。自分を限定しないでくださいね。未来はもっとポジティブに変えられますよ。希望を持ってください」という意図で言っているのだと思います。
決して、「Aさんが怪我をしたのは、私がAさんに怒りがあって変なことを考えてしまったせいだ。そんな私はダメだ」と自己批判をしてもらうためにこういったことを主張しているわけではないはずです。
けど、誤解しちゃいますよね。
なので、誤解を外してくださいね。
私の言っていることも含めて、楽になる主張だけ受け取ってください。
自分を苦しめる主張は無視して大丈夫です。
絶対的に「正しい」ことなんてありませんから。
Take it eazy.
お知らせ
9月EFTコース大阪開催
2016年9月17~19日にJMET認定EFTプラクティショナーコースを大阪で開催します。
大阪では初開催になります。
大阪でぜひやりたいと思い、講師に手を挙げました。
今から楽しみにしています。
関西圏の方はぜひお越しください。