メンタルが弱い/強いの区分
メンタルが弱いとか強いとかよく聞きますが、実は一括りにはできません。
勝負強さという意味でのメンタルの強さもあれば、忍耐力があるという意味でのメンタルの強さもあります。
それぞれ、状態や原因、対処法が違うので、区別してみました。
書きながら適当に区分したものなので、漏れや重複もあると思います。
①勝負強さ/勝負弱さ
一つの使われ方は勝負強さ(弱さ)です。
スポーツ、ゲームなどの勝敗があるものは心の持ち方でパフォーマンスが大きく左右します。
要は勝負時や本番でプレッシャーを過度に感じていないかどうかです。
勝負事や試験などでは当然緊張します。
このとき、適度にストレスがあって緊張するとき、集中力が高まり、肉体、頭脳のパフォーマンスは上がります。
まったくストレスがない状態が良いわけではなく、その場合もパフォーマンスは高くなりません。
メンタルが強いというのは、適度な緊張感を持つことで、通常以上のパフォーマンスでプレーできる人です。
メンタルが弱い人というのは、過剰に緊張することで、パフォーマンスを高めるどころか、通常の状態よりもぐっと低いパフォーマンスに陥ってしまう人です。
一言で言えば、プレッシャーに強いか弱いかということです。
②立ち直りの早さ/遅さ
もう一つは立ち直りの早さ(遅さ)です。
せっかく良い状態で本番を迎えても、何らかのアクシデントがある場合は往々にしてあります。
スポーツでは、メンタルを乱される場面はよくあると思います。
そうなると、パフォーマンスが落ちるので、いかに適切な状態に持っていけるかというのが重要になってきます。
リカバリーが早い遅いというのは、勝負事にはかなりの影響があるでしょう。
③鈍感力(/過敏)/打たれ強さ(/弱さ)
打たれ強い(弱い)という意味でメンタルが強い(弱い)という使われ方もします。
たとえば、上司から集団で怒られたとします。
すごくへこむ人もいれば、ケロッとしている人もいれば、人それぞれです。
たとえば、恋人から振られたとします。
これもすごくへこんで長い間引きずってしまう人もいれば、すぐに気持ちを切り替えて次の人に行ける人もいれば、人それぞれです。
全般的に打たれ強いとき、2つの可能性があります。
こういう人はいい意味で打たれ強いと言えます。
専門用語で言うと自我の防衛機制です。
自我の防衛機制について
自我の防衛機制というのは、簡単に言えば、自分が傷つくことを避けるための方法です。
自己価値が下がる恐れや心の傷に触れたくないため、別のことで逸らそうとします。
詳しくは下記の記事に書いています。
防衛機制はたくさんありますが、ここでは一つの例を紹介しましょう。
自分はまったく悪くないと考えるケースです。
いつも誰かや状況のせいにしたり、自分のことは棚に上げたり、まるで自分のことではないかのごとく分離したり、自己正当化の言い訳ばかりするなどです。
こういったケースの場合、一見メンタルが強いように見えます。
しかし、実際の構造は自分の傷に直面することを過剰に避けているためなので、むしろメンタルが弱いと言えます。
苦しみに直面するのが怖いため、自分でも気づかないレベルで自分を騙します。
解釈の問題
多くの人は打たれ強い面も打たれ弱い面も両方あります。
ある面ではあまり気にならなくて、ある面ではとてもショックが大きいという感じだと思います。
基本的には解釈の問題です。
ある状況が起こり(たとえば上司から怒られる)、それをどう解釈しているかということです。
苦しみを生む解釈をしていれば、メンタルへのダメージは大きいです。
解釈の元にはビリーフがあります。
また、自分にとって重要な価値観であれば、解釈は大きくなります。
この問題はビリーフ、セルフイメージ、価値観に左右されます。
とはいえ、全般的にショックが大きい場合もあります。
この場合はビリーフの問題も結び付いていますが、むしろ次に説明するストレス耐性の方が大きいでしょう。
④ストレス耐性
人によってストレス耐性は大きく違います。
ストレス耐性が強い人はメンタルが強いと言え、ストレス耐性が弱い人はメンタルが弱いと言えます。
- ストレス耐性が強いというのは、ストレスをより低く感じ、身体のストレス反応が少ないということです。
- ストレス耐性が弱いというのは、ストレスを過剰に感じ、身体のストレス反応が非常に大きいということです。
ストレスを受けたとき、身体はストレス反応が起きます。
詳しくは省略しますが、副腎からストレスホルモンが出て、ストレスに肉体レベルで対応します。
ストレス耐性が弱い人は、ちょっとしたストレスでも過剰にストレス反応が起きるということです。
つまり、ストレスホルモンが過剰に出るため、副腎が疲弊しやすく、肉体的な問題を抱えやすいと言えます。
愛着問題
これは乳幼児の愛着形成が大きな影響を与えていることが分かっています。
愛着というのは母子の結びつきです。
幼いころによく可愛がられ、世話をされた子どもでは、オキシトシンやセロトニンといった不安をコントロールする働きを持った神経伝達物質の受容体が増えます。
オキシトシン分泌が活発な人では、同じストレスを受けても、ストレスホルモンの上昇がわずかです。ところが、分泌が少ない人は、ストレスホルモンが上昇しやすいのです。
安心できる環境で育った人は、脳内にオキシトシン受容体が増え、オキシトシンがスムーズに作用します。
一方、虐待されたり、ネグレクト(育児放棄)を受けたりした子どもは、オキシトシン受容体が脳内にあまり増えないため、オキシトシンの働きが悪く、ストレスに敏感になってしまいます。
⑤我慢力/根気強さ
我慢力とか根性、根気強さは、嫌なことや苦しいことへの耐性がどこまであるかということです。
③鈍感力/打たれ強さ、④ストレス耐性と重複しますが区分して説明します。
一つはストレス耐性の問題です。
ストレス耐性が弱ければ、心身へのダメージが大きいので当然、耐性は低くなります。
但し、問題はこれだけではありません。
感情を麻痺させる我慢強さ
鈍感力とも関係がありますが、苦しくても耐えねばならない状況に追い込まれると、苦しみのセンサー自体をできるだけ感じないようにするケースがあります。
精神科治療薬にもこういう効果があります
感情に関する感度を下げるのです。
喜怒哀楽が少なくなり、フラットになります。人間味が失われます。
感覚を麻痺させると、自分がどうしたいかということも分からなくなります。
感度が下がると、黙々と耐えることができますので、我慢力が強いように見えるでしょう。
ビリーフや恐怖による我慢強さ
苦しくても忍耐力が強い人もいます。
かなりのストレスがあっても我慢できる人です。
資質の問題もありますが、ビリーフや恐怖による縛りが強いケースも多いでしょう。
また、非常にプライドが高く、人に弱みを見せたくなくて我慢するケースもあります。
周りから根性なしと思われるのが嫌で、我慢するケースです。
他にも、自分が我慢することで他者を守れるというケースも我慢力が上がります。
苦しくて、多大なストレスを受けているにもかかわらず我慢し続ける人は、心身の病気を引き起こしやすいです。
我慢強さは美徳ではない
我慢強いというのは決して美徳ではありません。
肉体的なストレス反応は、あくまで短期的な対処であり、長期的に受け続けるストレスには対応できません。副腎疲労などから多くの症状を起こします。
精神的には、うつになりやすくなります。
うつは簡単に言えば、心のエネルギーレベルが低下したとき、心身を休ませるために活動を強制的にストップさせる状態です。
ストレスがかかっているのに我慢してやりつづければ、心のエネルギーは次第に消耗していきます。
限界を超えて我慢する人は重度の心身の病気になりかねない
心身に影響が出てもまだ我慢している場合は、もっと悪影響が生じます。
症状が重いうつになったり、取り返しのつかない身体の病気になりかねません。
うつはメンタルが弱いから起こるというよりも、限界を超えて我慢しているから起こるのです。
そういう意味では我慢強い人が起きる病気だと言えるでしょう。
メンタルを強くする方法
では、メンタルを強くするにはどうしたらいいかを紹介します。
上記で分類したものに従って、対処法を挙げていきます。
但し、本来はケースバイケースなので、参考までに。
①勝負強さ/勝負弱さ
プレッシャーに弱い場合、より恐怖を感じていると考えられます。
解釈の問題
この場合、解釈が関係します。
負けること、失敗することでどんなダメージがあると潜在意識で感じているかということです。
ここが大きなダメージを連想していた場合、失敗の恐怖が大きいため、当然緊張感が強くなります。
たとえば、団体戦で試合に負けることで皆に迷惑をかけてしまうという思いが強ければ、プレッシャーが大きくなります。
過度な責任感や「人に迷惑をかけてはいけない」などのビリーフはセラピーで緩めることができます。
本人が感じている恐怖は人それぞれです。
そこが明らかになれば、セラピーで対処可能です。
セラピーの一つにEFT(感情解放テクニック)というのがあります。
やり方を公開しています。ご参考まで
無意識の抵抗のケース
また、無意識で勝ちたくない、試験に合格したくないと思っている場合があります。
たとえば、勝つと相手を傷つけてしまう、嫌われたくない、合格してその学校に行きたくないとかその仕事に就きたくないとかです。
何か特定のことだけ勝負弱い場合は、ここを疑ってみます。
ここもビリーフが原因であれば、セラピーで対処できます。
②立ち直りの早さ、③鈍感力/打たれ強さ
解釈の問題
一つは解釈の問題です。
その出来事をどう捉えているかということです。
それを自分にとって過剰に都合が悪く捉えているので、ショックが大きいのです。
そこにはやはり元々持っているビリーフやセルフイメージが大きく関係しています。
それが明らかになれば、同様にセラピーで対処可能です。
ストレス耐性の問題
もう一つはストレス耐性の問題です。
ストレスに過敏であるがゆえに一つひとつの出来事に対して肉体的、感情的な反応が大きくなります。
これは次で扱います。
自我の防衛機制が過剰なケース
また、一見メンタルが強いように見える自我の防衛機制が過剰なケースは、これを緩めていくのが解決法です。
まずはこの構造を理解する必要があります。自己正当化しているときは自分の傷に向き合うことはしません。
自分の傷に向き合う覚悟ができたとき、EFTなどのセラピーは大きな手助けになるでしょう。
④ストレス耐性
資質として受け入れる
ちょっとしたストレスでも過剰にストレス反応が起きてしまう人の場合は、まずはストレス耐性の弱さを資質として受け入れることが重要です。
なぜなら、ここを変えるのはすぐには難しいからです。
自分がストレス耐性に弱いことを受け入れれば、対処法は山ほどあります。
たとえば、人前で話すことに緊張を感じやすいことは弱みになりますが、準備を周到にすることによってある程度カバーできます。
また、この準備周到さは強みになります。
愛着問題に対処する
ストレス耐性が弱いことが幼児期の愛着問題に起因するのであれば、そこをワークしていきます。
愛着問題は性質上、根気強いワークが必要です。
カウンセリングでも時間がかかるテーマです。
⑤我慢力/根気強さ
ストレス耐性の問題であれば、上記を参考にしてください。
ビリーフや恐怖による縛りが強いケースは、心身の問題に発展しやすいので、緩めたほうがよいでしょう。
どんなビリーフや恐怖が必要以上に我慢させているかを明らかにし、それをセラピーなどで緩めていきます。
「がんばること=善/がんばらないこと=悪」を緩める
日本はがんばることが美徳とされる文化です。
がんばる、我慢する、犠牲になるというのが美談として語られがちです。
同時に我慢力がないというのは「根性なし」、「弱い」、「男らしくない」などと捉えられ、なるべく周りからそう評価されることを避けます。
そのため無理をすることが当たり前になっていて、心身の異変に気づかず、あるいは気づいていても無理をし続けるケースが多くあります。
メンタルが弱いことを受け入れる
メンタルが弱いことは上記のようになんらかの原因があります。
ここで苦しみを増やすのは、メンタルが弱いことを責めてしまうことです。
がんばること、我慢、根性、忍耐を美徳としている人は、そうでない要素が自分にあると感じるとき、自分を責めることになります。
これはいたずらに自分を傷つけるだけです。
よりストレスが増えて、余計に心身が消耗します。
メンタルの弱さも個性の一つ
メンタルが弱いことは決して悪いことではありません。
それも一つの個性であるとして受け入れてみると、状況は変わらなくてもストレスは大幅に少なくなります。
心の傷を癒すことでメンタルの問題に対処しやすくなり、結果的に強くなりますが、資質として感受性が高い人、低い人がいます。
元々敏感な人は人よりも傷つきやすく、感情移入しやすいです。
そういった資質を受け入れることができれば、仮に敏感だとしても苦しみはぐっと少なくなります。
抵抗するから苦しみが強くなります。
参考記事「メンタルが弱い=ダメ」の誤解を解く
自分に正直でいると嫌なことに我慢できなくなる
また、我慢ができないことは、ある意味自分の心に正直な反応が起こっているとも言えます。
自分に心から素直でいると、嫌なことに対する嫌悪感が強くなります。
今までは我慢できていたことに我慢できなくなることもあります。
ボク自身、自分を癒して、自分に素直になっていくと、嫌なことを嫌だと感じる度合いが強くなり、我慢することが難しくなりました。
ある意味、自然なセンサーに復活したと言えるかもしれません。
自分に正直に生きていい!
どんどん自分に正直に生きていいんです。
それを妨げているのは、自我(=恐れベースのプログラム)であり、私たちを縛っているビリーフです。
癒しはこれを解放しますので、自分らしく正直に生きることがどんどん楽にできます。