エゴのメカニズム

エゴが恐れていること

「私」という感覚――これを自我とかエゴと呼びますが、エゴが恐れていることはエゴが小さくなることです。

どういうときに小さくなるかというと、自分の価値が傷つけられたときです。

分かりやすいのは他者から批判されたり、非難されたときでしょう。

実際に批判されていなくても、心の声で批判するケースもたくさんあります。
「こんな自分はダメだ」「こうしなきゃダメだ」「情けない」…などと批判します。

心の声で非難するのはなぜ?

心の声で非難するのは自分の中にルールや価値基準があるからです。
「人に迷惑をかけてはいけない」とか
「期待に応えなくてはならない」とかいろいろあります。

このルールに基づいて、心の声として自己批判が起きます。

自己批判を根本的に解消するにはこれらのルールを緩めることです。

エゴの自己価値回復機能

何らかの出来事があって、私が傷つけられたと感じたとき――すなわちエゴが小さくなったとき――、エゴは自己価値を回復させようとします。

どうやって回復させるかというと、そのやり方は本人のパーソナリティや置かれた環境によってやり方は異なります。

基本的には幼少期に学んだ方法を大人になってもずっと使い続けるケースが多いです。

いくつかエゴの自己価値回復方法のバリエーションを紹介しましょう。

今回の記事では自己価値回復方法のすべてを網羅しているわけではありませんし、区分も私が適当にしただけです。抜けているのもたくさんあると思います。

逃避

感じないようにする

感じないようにすれば、苦しまなくて済みます。ある意味手っ取り早い方法ですが、相応のリスクを伴います。
完全に感覚のセンサーを遮断するのは困難です。感じているのに強く抑圧して感じないようにします。抑圧された感情のエネルギーがどんどんたまっていき、それが将来の心身の苦しみにつながっていきます。
また、感覚のセンサーを抑圧していると、欲求も同時に抑えてしまいます。欲求が強いほど、不満も強くなるため、不満のセンサーをオフにするならば同時に欲求のセンサーもオフにする必要があるからです。
欲求のセンサーがオフになれば、「私はどうしたい」という感覚がなくなります。

閉じこもる

エゴが小さくなりそうな状況を徹底的に避ける手段です。人間関係を極力避けたりします。引きこもり、登校拒否が挙げられます。
虐待、過保護、あるいは生まれつきの資質によって、外界の刺激に敏感に反応します。ちょっとのことで傷つきやすく打たれ弱いのです。普通の人ならどうでもいいような刺激にも敏感に反応するため、ストレス反応が過敏に生じます。
疲れやすく、傷つきやすいので閉じこもることを選択せざるを得なくなります。
閉じこもっている限りは安全ですが、いったん閉じこもるとさらに外界の刺激に過敏になるので、社会復帰がますます難しくなります。

妄想

妄想の世界に逃げ込むこともエゴの自己機能回復手段です。妄想の中で相手をやっつけたり、自分が優位に立っている姿や自分が理想の存在になっている姿を想像し、発散します。
但し、いくら妄想しても現実とのギャップがあることから苦しみは避けられません。

分離/解離

あまりに苦しみが強い場合は、強制的に分離させてその場面をフリーズさせます。その情報を自分から切り離します。
トラウマを受けたときの対処法です。これは通常の状態では処理できないために非常事態として取る行動です。ある意味最終手段であり、通常の状態での処理に比べて副作用が強いです。
強度の抑圧といえます。抑圧された感情エネルギーは強く、心身に悪影響を及ぼします。

他にも、ポジティブで抑えるとか、悲しいのに笑うとか、真っ白になるとか、いろいろあるでしょう。

攻撃/防御

自己正当化/他者批判

エゴは自分が小さくなったと感じたとき、価値を取り戻すために「自分は間違っていない」ことを証明しようとします。
自分の正しさを証明するためにありとあらゆる理由を探します。
相手に対して怒りを抱きます。直接怒りを相手にぶつけられないときは、愚痴や不満を漏らします。
いずれにせよ、自分が正しくて、相手が間違っているというのが前提にあります。
「相手が悪い、私は被害者だ」
自分が被害者の立場でいれば、「私」の価値は毀損せずに済むため、被害者の立場を固執します。
いわゆる、「被害者意識」はエゴの自己回復機能の一つです。

否認

自己正当化と同じですが、「私は間違っていない」という立場を絶対に崩さない自己機能回復方法です。
正論かどうかは関係ありません。私が間違っていることを認めたら、エゴは小さくなるのでそれを絶対に認めようとしません。
矛盾があろうが、論理的に破たんしてようが、どうやったって認めようとはしません。
場合によっては事実を捻じ曲げます。
たとえば、ペットが死んだという事実に耐えられなくてペットは誰かに連れ去られたと言ったりします。

自己批判

自己批判は一見、エゴが自己価値の縮小に直接対処しているように思えますが、実は自己正当化と同じレベルの自己防衛に過ぎません。
自己批判しているときをよく観察してみると分かりますが、本当の意味で自己価値縮小の痛みに向き合っていません。
自己批判することで、そこの痛みを避けています。別の苦しみをわざわざ作り出して逃げています。
「これだけ自分を責めているのだからもう責めないでほしい」とか「自分を卑下することで慰めてほしい」という防衛に使われる面もあります。

価値の獲得

エゴの自己機能回復手段として、一番分かりやすいのは私の価値を上げることです。
ではどのように上げていくのでしょうか。
これもいろいろな方法があります。

所属価値を上げる

エゴは私の価値に結び付くものは何でも利用します。所属しているものの価値を私(他者)の価値だと錯覚します。
たとえば、東京大学に所属する(卒業した)人は多くの人が一目置きます。大学という所属している物の価値が高ければ自分の価値もそれだけ上がるように思えます。
学校の価値、クラブの価値、サークルの価値、会社の価値、団体の価値、友達のグループなど、所属しているものから価値を得るために、価値あるものに所属しようと努力します。
夫、妻、彼氏、彼女、友人なども同じ構造で、相手のステイタスから価値を得ようとします。社長や医者、弁護士の妻になるとか、アイドルと付き合うとかです。

所有価値を上げる

所属しているものと同じく、所有しているものも自己価値の向上に利用します。
お金、家、土地、ブランド品、ファッション、家電、雑貨、装飾品、車、クレジットカードなどさまざまです。
医師免許、弁護士免許などの資格もあります。

名声を上げる

ノーベル賞は分かりやすい例ですね。勲章・褒章も同様です。作家では直木賞とか芥川賞といった賞。各分野にいろんなステイタスの象徴があるでしょう。
首相や社長などの権威者から認められることも同様です。

セルフアイデンティティを上げる

自分に対するポジティブなアイデンティティを作るのもエゴの自己保全です。
ポジティブな自分を作り上げること、理想の自分を作り上げることで自己価値を上げようとします。ところが、必ずネガティブな側面もあるので、ポジティブと反対の要素を抑圧しかねません。

このため、私自身、セルフイメージを単にポジティブに変えればいいという手法に懐疑的です。自己啓発とかカウンセリング/セラピーでもよく聞きますが…

エゴの自己価値向上欲求は上限がない

エゴが自己価値を上げようとする欲求にはキリがありません。際限がありません。
そのため、「もっと、もっと」が永続的に続きます。エゴの仕組み上、ここまでいけば十分だというものはありません。
いくら他者よりも優れていても、足りないところを見つけ、価値を上げようとします。
決して満足しないため、この努力は幸せをもたらさないのです。

じゃあどうすればよいのでしょうか?

自己価値回復機能を使わずにダイレクトに苦しみの感覚に向き合うこと

エゴが自己価値を傷つけられたと感じたときに、これらの自己価値回復機能を使わず、その苦しみにダイレクトに向き合うことです。

一言で言えば、「抑圧しない」ということです。

この苦しみを避けるために散々防衛しているのですから、向き合う苦しみはかなりのもののように思えます。
しかし、耐えられないレベルでは決してありません。この苦しみで死ぬこともありません。
向き合ってみると単なる不快感に過ぎません。

たとえば、他人から批判されたとき、エゴが小さくなることをそのまま感じます。エゴはすぐに価値回復をしようとしますが、それを「意識的に」させないようにします。

「意識的に」というのがポイントです。無意識でやってしまいますから。

身体感覚を感じる

そのとき身体の感覚に意識を向けてください。
胸やのど、みぞおちやお腹などに何らかの感覚を感じるでしょう。
この感覚をひたすらオープンに感じます。

このとき大切なのは、身体の感覚を通して感じる質感を意識することです。

思考がたくさん湧いてくると思いますが、横に置き続けます。思考のストーリーに入っていかないようにします。
ただ、身体の感覚を通して感じるエネルギーの質感に注目してください。

不快な感覚だと思いますが、なくそうとしないように心掛けてください。
「早く感じきって流したい」という思考が出ても、ただ横に置いてください。

エネルギーの質感をただ感じ続けます。

観察する感じ、あるいはそのエネルギーをもっと大きくしてみようと思ってみるのもいいでしょう。

エゴはすぐに思考やイメージで抑圧しようとします。
ポジティブな光で見えなくするようなイメージが訪れるかもしれませんが、その光も払いのけます。

できるだけ、感覚をダイレクトに感じていきます。

感覚をダイレクトに感じるのはかなり難易度が高いです。そのため、感覚をダイレクトに感じるためのワークや工夫の仕方がいろいろあります。
カウンセリングやセルフワーク講座ではこの方法をレクチャーしています。

感覚をきちんと感じられたら自然に変化する

感覚をきちんと感じられたらそう長くない時間に感覚が変化してきます。

そうすると、不思議なことに次に同じようなことをイメージしても大丈夫になっています。
また出てきたら同じようにやってみてください。

これをやっていくと、エゴの自己価値回復機能を使わなくても済むため、エゴが弱くなってきます。

エゴが弱くなるとどういうメリットがあるか?

自己価値回復にエネルギーを使わなくて済む

エゴが弱くなり、自己価値回復機能を使わなくて済むようになるとそれだけでずいぶんと生きやすくなります。
自己価値を上げなくても済むのであれば、どれだけ気楽に生きられるでしょうか。

人生をかけてこれをやっていることがしばしばあります。
個人的に非常にもったいないと感じます。

自分の本質とつながりやすくなる/個性を生きられる

そして、エゴが弱くなれば、自分の本質とつながりやすくなります。
そもそもつながっているのですが、エゴでそれが見えなくなっているというほうが正確な表現かもしれません。

前回の記事で書いた「自分の個性を生きよう」というのも本質的には同じです。

自分の個性を生きよう

2016.08.20
自分の中から湧いてくるものに素直に従えないのは、エゴの影響が大きいです。

ハートで動ける

今回紹介したエゴの自己価値回復方法のどれもが、自分のハートを無視しています。どうしたいかがまったく考慮されず、無意識でそこが抑圧されて、自己価値回復行動へとエネルギーが割かれてしまいます。

それでは本当の自分は出てきません。

エゴに無意識でコントロールされる人生ではなく、ハートで動く人生の方が断然素晴らしい人生です♪


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2 件のコメント

  • 時々拝読させてもらっています。
    「感情をこねくり回さず体で感じきる」
    これを以前友達に教えてもらったのですが、上手く出来てるのかよく分かりません。
    今自分が批判されたり怒鳴られた場面を何ヶ月も反芻してイライラしています。
    私はすぐ「自己正当化/他者批判」の反応をしてしまい、いつまでも相手への反論の言葉(いかに相手が間違ってるか)を頭の中で考え続けてしまいます。
    カッとしやすく、相手が目の前に居たらいつも実際に怒鳴り返すか本当の喧嘩になってしまうので、批判を上手く流すことを覚えなければと思い、色んな本を読んで「自己正当化」の他にも「感じないようにする」「誰にも文句を言われないくらいもっと頑張る」等色々試して、なんとかして感情を処理しようとしましたが、やっぱりなんだか違う気がして、受け止め直そうとして、また批判された場面を反芻することを繰り返していました。
    それでこの記事を読んで、前に友達が教えてくれたやり方だ、と思い出しました。
    体で感じようとするとお腹の奥や喉の奥からマグマのような怒りが混み上がって来るのを感じます。
    反撃しようとする言葉を止めて、その塊みたいなものをずっと目を閉じて感じているのですが、いつまでやればいいのか、どうなったら感じきったことになるのか分かりません。
    >感覚をきちんと感じられたらそう長くない時間に感覚が変化してきます。
    とのことですが、具体的にどういう風に変化するのでしょうか。
    どういう感覚に変わったら終わりに出来るのでしょうか?

    突然の質問失礼しました。

    返信

    よっし~(西川佳宏)

    よっし~(西川佳宏) Reply:

    チリさま

    ブログを見てくださってありがとうございます。

    >色んな本を読んで「自己正当化」の他にも「感じないようにする」「誰にも文句を言われないくらいもっと頑張る」等色々試して、なんとかして感情を処理しようとしましたが、やっぱりなんだか違う気がして、受け止め直そうとして、また批判された場面を反芻することを繰り返していました。

    なんだか違う気がしたのはいいセンスですね。
    感じないようにしたり、もっとがんばるのは感情を抑圧する(見ないようにしている)だけなので解決にはなりません。

    >体で感じようとするとお腹の奥や喉の奥からマグマのような怒りが混み上がって来るのを感じます。
    反撃しようとする言葉を止めて、その塊みたいなものをずっと目を閉じて感じているのですが、いつまでやればいいのか、どうなったら感じきったことになるのか分かりません。

    基本的に終わりはご自身で分かります。スッキリするからです。
    スッキリしないというのは、まだ残っているということです。

    ブログにも少し言及していますが、ダイレクトに感じるというのはかなり難しいです。上級者向きです。
    かなりの慣れが必要です。
    すぐにできる人もいますが、感じるセンスに長けている場合です。
    感じやすくするテクニックはいくつかあります。セラピーのフォーカシングという方法も一つの方法です。

    怒りの場合、かなりのエネルギーなので、感じきるやり方よりも別のやり方をオススメします。
    枕を叩くとか、紙に書き殴るとか、文句言いながらぞうきんなどを壁にぶつけるとか、そういうやり方です。
    怒りのレベルによっては結構時間がかかるかもしれませんが、その人の状態や怒りの強さによって違うのでどのくらい時間がかかるかは分かりません。
    やってもやっても全く怒りが落ちない場合は、何らかの別の原因がありますので、そこはプロに探ってもらった方が早いです。
    もっと深いレベルの原因まで見てくれるでしょう。

    こちらの記事も参考にしてください。
    https://selfcompass.jp/anger-management-150810/
    https://selfcompass.jp/eft/

    よろしくお願いします。

    よっし~(西川佳宏)

    返信

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    ABOUTこの記事をかいた人

    よっし~(西川佳宏)

    心理カウンセラー/セラピスト(東京・新宿)。「心地よく、自分らしく、生きる」ためのサポートを提供。得意分野は人間関係の悩み、対人恐怖の悩み、感情・自己否定・マイナス思考の悩み、不安・恐怖の悩み。柔らかな雰囲気に加え、こころの悩みの本質をやさしく説明するのが得意。プロフィールの詳細はこちら