主体者意識を持って生きる
主体者意識を持って生きる。つまり、「自分が人生の主体者だ」という認識をもって人生を生きることについて記事を書いてきました。
前回のブログは、実存主義の先駆者であるキルケゴールの思想を紹介しました。
今回は、同じく実存主義の先駆者であるニーチェの思想を紹介します。
実存主義に関しては前回のブログをご覧ください。
ニーチェの超人思想
ニーチェの思想はたくさん面白いものがありますが、ここでは超人思想にとどめます。
ニーチェは、「ツァラトゥストラはかく語りき」の中で、人間のあるべき姿を「超人」と呼びました。
超人とは何か?
超人というと、スーパーマン的なすごい人のイメージがありますね。
「超人を目指せ」というのは、「今の自分がスーパーマンみたいな凄い人になることを目指しなさい」というのではありません。
ニーチェが説く超人とは、本来の自分、本当の自分、ありのままの自分という意味です。
超人 ≠ スーパーマン的自分
超人 = 本来の自分、本当の自分、ありのままの自分
今の人々は「本当の自分で生きていない」というのが前提にあり、本当の自分で生きることをニーチェは説いたのです。
では、ニーチェが説く超人になるにはどうすればよいのでしょうか?
本当の自分で生きるにはどうすればよいのでしょうか?
超人になるための3段階の変化
ニーチェは超人に至るまでの変化の過程を「ラクダ→獅子→幼子」の三段階の変化で説明しています。
ラクダの段階
ラクダの意味は、従順さ、忍耐、努力、勤勉さを表します。
ラクダは飼い主の命令に従って、重い荷物を運びます。すなわち、主体性がない人物の象徴です。
- 自分の頭で考えない。「なぜ荷物を運ばなければならないのか?」「何の目的で運んでいるのか?」
- 皆がやっているからやる。周りがやっているからやる
- 親が言うからやる。親が望むからやる
- 会社が命令するからやる。会社のためになるからやる
- 神様が言うからやる
獅子の段階
ダジャレではないですが、ラクダは「楽だ」とも言えまして、考えずに従って生きる生き方は楽ちんです。
ですが、人間らしさを抑えられることを引き換えにしなければならず、やがて反発が生まれます。
- ラクダでいることに疲れる
- ストレスが限界に達する
- 親への反発(反抗期)
- 親からの独立
- 権力者への反発
- 神への反発
そして、獅子(ライオン)になります。
獅子とは、主体性を取り戻していますが、原動力は反発や怒りの状態です。
- 権力に対する反発から来る行動
- 自分をコントロールするものへの怒り・反発行動
- 親への恨みや反抗が根っこにある行動
- 自分を認めさせるための強烈な成功欲求
- 競争を生き抜く力
獅子になると、従順なラクダから極端に振れることになります。
獅子はラクダを否定するか、あるいはラクダ使いを否定します。
幼子の段階
幼子になると、怒りは消え、穏やかで平和になります。
「楽しいから〇〇をやる」という状態です。
まさにハートで生きる段階です。自分の創造性を発揮できる遊びに没頭します。
人生が創造性を発揮できる場所となり、好奇心を取り戻し、イキイキしてきます。
創造性を発揮するというと、芸術活動とか、クリエイティブな仕事とか、そういう特別な活動をするようなイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、毎日の一つひとつの行為が自分自身の表現であることを理解していて、日常生活で創造性を発揮することです。
没落
幼子の自分独自の人生は、世間から見ると一見「ただ競争社会から降りた人間」のように見えます。
人生の負け組のように見えるかもしれません。
そのため、獅子から幼子への変身をニーチェは「没落」と呼びました。
怒りや反発、脱落も必要なプロセス
ラクダから獅子への「怒りや反発」も、獅子から幼子への「競争からの脱落」も、悪いことではなく、成長のプロセスです。
表面的には、反抗期はよくないもののように思えます。
また、怒りを原動力にした反発者も同様です。
しかし、それはラクダから獅子に変身するために必要なプロセスなのです。
同様に、競争からドロップアウトすることや、社会の負け組になることも、よくないことのように思えます。
しかし、それも獅子から幼子に変身するために必要なプロセスなのです。
自由に主体的に状態を変化させられるのが超人
ラクダ、獅子、幼子と3段階で見ていきましたが、これは自我の発達段階とも符合し、さすがニーチェですね。
私の解釈ですが、超人とは、幼子の状態を指すわけではなくて、幼子の状態を経て、自分の意志でラクダや獅子や幼子に臨機応変になれる状態であると思っています。
ラクダはラクダの生き方しかできません。
獅子は獅子の生き方しかできません。
幼子は幼子の生き方しかできません。
しかし、超人は臨機応変にラクダにもなれ、獅子にもなれ、幼子にもなれます。
会社の中ではラクダを演じながらも、幼子の創造性を発揮し、やるべきときは獅子のエネルギーで邁進できます。
このとき、本当に自由に、自分らしく生きられるのです。
自分らしさや本当の自分というのは、固定した自分像ではなく、臨機応変に流動している自分像であり、精神的に成熟しているほど、いろんな自分像を使いこなすことができるようになります。
ハートシフトを応援したい
私の言葉で言えば、超人とは「ハートで生きる人」のことです。
超人への移行こそ、「ハートシフト」です。
私たちは皆、ラクダの一面や獅子の一面、幼子の一面を持っています。
その部分で人生の悩みや問題として、ラクダの部分や獅子の部分がクローズアップされることがよくあります。
そこをスムーズに精神の成熟のほうに移行できるサポートができるのが心理カウンセラーの役割であると思っています。
ニーチェの3段階の変化は、主体的に生きるためのヒントとして大きな参考になるでしょう。